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小説の創作と日々思うことをつらづらと。
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 台風12号は関東を直撃し、一日だけ猛威を奮い気が済んだように東北へと北上していった。土砂振りの雨は一転絶好の行楽日和と変わり、季節の移り変わりを思わせた。
 男は歩いている。お天気お姉さんの忠告を聞きいれ、七分丈のシャツを羽織り、のろのろと歩いていた。外は静かだった。擦れ違う人はいれども、特に気になる声量でもない。パチンコ屋の前を通れば金属音と電子音の塊が体に打つかりはする。車も滞りなくすいすいと流れている。たまにクラクションの音が鳴るも気にならない。
 ポケットで軽く振動した。携帯が緑色に明滅している。電話の主は母親だった。病気で入院していた父親が息を引き取ったらしい。何か小言を言っていたようだが、男にはよく聞き取れなかった。少しの沈黙の後、溜息を最後に音が途切れた。男はまた携帯をポケットにしまった。
 のろのろと擦るように歩く男の靴が何かをすり潰した。靴底にはミンチ状に伸びてしまった肉と一本だけ透き通る羽が見えた。おそらく蝉だ。
 蝉。男は蝉の鳴き声を聞くことなく夏を終え、そして秋の始まりを感じた。
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